「、」



ふっと意識が持ち上がって、思考が働かないまま隣のぬくもりに目を向ける。

毛布を肩にかけて、すやすやと腕の中で眠る彼女。最近は途中でうなされて起きることも、夜中に泣き出すこともほとんど無くなった。



俺が朝まで起こされなかったということは、今日も朝までゆっくり眠れたんだろう。

額にキスを落として静かに「おはよう」と告げれば、鞠は存外ぱっちりとした目を開けた。



「おはよ、恭」



「めずらしいな。寝起きいいじゃねーか」



「ふふ、だってさっきから起きてたもの。

まだかなー?って、恭が起きるの待ってたの」



……俺より早く起きてるなんてめずらしい。

別に鞠は遅刻とか寝坊とかするタイプじゃねーけど、かといってめちゃくちゃ早起きなわけではない。




どちらかといえば俺は目がすっきり醒めるタイプだからそのうち動き出すけど、できればギリギリまで布団と戯れていたいのが鞠だ。

俺らの休日の行動は、寝起きで俺の意見が通るか鞠の意見が通るかで、大きく変わる。



「早く起きたなら、昼からどっか出かけるか?

その前にお前が作った朝メシ食いてーんだけど」



「……えー、昼までごろごろしないの?」



「先週もしただろ、それ」



鞠が不服そうな顔をする。

でも朝メシが食べたいという俺のわがままは一旦聞いてくれるようで、「何があったかな」と冷蔵庫の中身を思い出そうとする鞠。



「喉渇いたから水飲みてーし、とりあえず下行こうぜ」



身を起こして、無言で見つめてくる鞠の背中を起こす。

ベッドをおりて手を引っ張ってやれば、鞠も素直にベッドからおりた。……わがままめ。