連れ込……、連れ込んでるけど。

仮にも男子高校生の息子にそんなことを言ってくる母親ってどうなんだろうな。我が母親ながら、若ぇなとは俺も思うけど。



『そうそう、婚約発表行けなくてごめんなさいね。

パパは顔出しに行ってくれたみたいだけど』



「別に。

あとどうでもいーけど今どこにいんだよ」



『今? 今はローマ』



ローマ……今は冬時間と考えて、向こうは昼か。

基本現地が夜の間にしか連絡してこねーのに、昼にわざわざ電話してくるなんて珍しい。



『……なんかひさしぶりに声聞きたくなっちゃって。

元気にしてるなら、それでいいんだけどねー』



俺はこの人の恋人じゃない。じゃあ父親の方に掛けろよ、と言いたくはなるが、向こうは向こうで忙しいから気ぃ遣ってんだろう。

俺にもわざわざ掛ける前に、出れるか聞いてくるぐらいだし。




「またしばらく帰ってこれねーの?」



『うーん、再来月くらいかしら。

どうしたの? ママいなくて寂しい?』



「いや全く」



ずっと隣で静かにしている鞠の頭を、左手を伸ばしてそっと撫でる。

心地良かったのか、猫みたいに目を細める彼女。



『そっかそっか。

次帰ったら、そのときは彼女紹介してね』



「んー」



じゃあ行くわね、とすぐに電話が切れる。

常に時間に追われている人だから、今回も限られた時間の中で電話してきたんだろう。……俺に電話する暇があるなら、休めばいいってのに。