◆ Side Kyo



「ねえ、恭。……これだぁれ?」



付き合ってまたも数ヶ月。

珍しく鞠の家に泊まりに来たら、蒔がかまって欲しいとせがんできた。ずっとべったりで、なかなか離れない。そしてようやく蒔がお手伝いさんと風呂に行った隙に、今度は目の前にスマホを突きつけられる。



それは俺のスマホで。

『恭いま電話に出れる?』というメッセージの通知が表示されていた。



「あー……」



アイコンは水着姿の女だし、名前も「Rin」。

どうしたって言い逃れできない女からのメッセージに、小さく息を吐く。



圧倒的デジャヴである。



……つーか、なんで毎回俺がこんな目に遭ってんだよ。




「それウチの母親」



「……えっ」



「電話出れっけど、

今どこの国から掛けてくるつもりなんだろうな」



驚く鞠の手から、スマホを返してもらう。

『出れる』と一言しか返さない息子にも、何も思わねーんだろう。数秒後には、メッセージを通して国際電話がかかってきた。



『もしもし恭ー? 元気にしてるー?』



「おかげさまで。誰もいなくて静かですげー助かる」



『あら。彼女連れ込んでるんじゃないの?』