「怖く、ない」
「でも手震えてる」
「……恭なら、平気なの」
「相変わらず俺を煽んのは得意だな」
キスの回数が増える度に、強ばった身体から力が抜けていく。
服の裾から、わたしが怖がらないか確かめながら、恭の指が肌を辿る。
何も変わっていないはずなのに、空気が甘くなっていくのを感じる。
ただ触れられただけで呼吸が上ずるなんて、一体どんな原理なんだろう。
呼吸を重ねて、ギュッと彼にしがみついて。
涙が出てきたのは、あまりにも幸せだからで。
「……泣くなよ。俺お前が泣くのに弱ぇんだから」
「そうなの?」
「お前のこと守ってやらねーと、って思うんだよ」
彼が照明のリモコンを手に取って、すこし部屋を薄暗くする。
完全に暗くはないから、見上げれば恭の表情がはっきり見えた。
「もう二度と、離してやれねーよ」
「……離しちゃやだ」
恭に触れられて、求められて。
「愛してる」と囁かれれば怖さなんて忘れて、頭の中は恭でいっぱいになった。