「おかえり、蒔」



「ただいまっ」



恭の家に1度荷物を置いて。

黒田さんが待っててくれるというから、ショッピングモールに必要になりそうなものと食材の買い出しに行った。



フードコートで遅めのお昼ご飯も済ませて。

黒田さんにお土産のコーヒーを手渡し、蒔の友だちの家まで、蒔を迎えに行った。



「きょーちゃん!」



ありがとうございましたと、しっかりお礼を言ってから。

蒔とふたりで車に乗り込むと、蒔が嬉しそうに声を上げる。



……やっぱり彼女は、恭のことをすごく好きらしい。




「ん、おかえり」



「ただいまぁっ。なんでいるのー?」



「蒔。そのことですこし話があるのよ」



車が、静かに発進する。

幼い少女は、不思議そうに首を傾げた。



「……蒔には、実はね、お父さんがいるの」



どうやって伝えるか、頭の中で何度も考えた。

けれどきっと、真っ直ぐに伝えた方が、蒔には伝わると思う。



「蒔がお泊まりに行ってる間に、色んなことがあって。

……住んでたお家から、離れなきゃいけなくなったの」