「鞠お嬢様と恭様がご婚約なさった、と。

社長は、フルールの代表にそう仰ったようで」



「……お父さん」



勝手に嘘つかないでよ、と、思うけれど。

……恭とそうなればいいのになあって気持ちは、確かにある。恭も恭で、別に文句はないみたいだし。



「まあ。……私もお似合いだと思いますし」



「黒田さん」



今まで、一度もそんなこと言われなかったのに。

素直に認めてくれる彼。よくわからないけれど、トントン拍子で恭との未来が近くなってる。



まだ付き合ったところなのに。

……でも、こうして恭と一緒にいることを、みんなに認めてもらえているのだとしたら、光栄だと思う。




「恭様。

来月の誕生日パーティに出席して頂きたいのですが」



「……もしかして例の重大発表かしら」



「はい。お嬢様と婚約なさったことと。

……フルールジャパンとの、企業提携のことで」



……重大発表ってわたしの婚約の話だったのか。

迂闊に紘夢との婚約を発表されなくてよかった、と今更ホッとする。黒田さんに急に言われても「わかりました」と返してくれる恭。



どうやら、わたしと一緒にいてくれるらしい。

……まあ、俺と婚約すればって、言われてたけど。



「荷物をお渡しする際に。

婚約指輪もお嬢様へお届け致しますね」



本当に。

……わたしたちは、無駄に遠回りしたんだと思う。