わたしの顔を見るためと、恭が一度帰るために家に来てくれた藍華のみんな。
俺らはたまり場行くよ、と4人で帰ってしまい。
恭と黒田さんと部屋で待っていれば、インターフォンが鳴る。
黒田さんがすべて対応してくれたかと思うと、警察官がふたり。片方は男性、もう片方は女性で、どうやらわたしの話を聞きに来たみたいだ。
「……ごめんね、昨日の今日で。
ゆっくりでいいから、すこしでも話せたりしないかな?」
「……はい、」
どういう状況だったのか。
恭に隣で手を繋いでもらいながら、順を追ってゆっくり話していく。恭と別れてマンションに入ったあと、ポストの前で彼と出会したこと。
エレベーターに一緒に乗り込んだあと、何かで口を塞がれて意識を失ったこと。
目が覚めたらあの場所にいて、何を言われたのか。……触られたことに関しては、気持ち悪さが勝って、詳しくは話せなかった。
ただ、助けに来てくれたのは黒田さんだから。
彼も着いた時にどういう状況だったのか、補足してくれる。
「わかりました。……つらいのにありがとう」
昨日の場所は、初瀬さんの会社のすぐそばにある建物で、彼が所有していたものらしい。
どういう意図で所有していたのかは、また話を聞くそうだ。
現行犯で捕まっているし、容疑も認めてる。
明日にはニュースになるようだから、やはり今日の間にこのマンションを離れるのが良さそうだ。
「……好き過ぎて、おかしくなったのかな」
ぽつり。
警察官が帰ったあと、つぶやくわたしに、「だとしても許されねーよ」と恭は返してくる。彼が言う通り、初瀬さんはこの後、法で裁かれるのだろう。
「話も終わりましたし、ここを出る支度をしましょうか。
先ほど、しばらくお世話になると彼から聞きました」
「うん。……その方が安心するから。
その代わり、蒔のことは、お願いできる?」



