「……じゃあこっち側から乾かすか」



恭がわたしの目の前で、膝立ちになって。

わたしに顔が見えるところで、つけることを予告してからスイッチを入れてくれる。その配慮もあってか、今度はびっくりすることもなくて。



大人しく髪を乾かしてもらいながら、恭を見つめる。

……襲われたわたしのこと、どう思ってるんだろう。



嫌になったり、してないのかな。

でもさっき、しばらくウチにいればいいよって言ってくれたし。今もこうやって優しいから、嫌がられているようには見えない。



「……わたしのこと好き?」



丁寧に、髪を乾かしてもらったあと。

抱きついてそう聞いてみたら、恭が一度黙る。



反射的に顔を上げて、そういえばみんないるんだった、と思い出した。

恥ずかしがってるのか、抱き締め返してもくれないし。




「当たり前だろ」



「……もっとおっきい声で言って」



「お前なあ……」



コンセントから外して、ドライヤーのコードを纏める恭。

わがままなわたしに呆れているようにも見えるけど、それでも恭は優しくて。



「好きに決まってんだろ」



「……うん。わたしもすき」



そそくさと逃げるように洗面所にドライヤーを片付けに行ってしまうから、慌ててそれを追う。

みんなはリビングの中で、洗面所にはふたりきり。ドライヤーを片付けた恭に腰を引き寄せられ、そっとキスする。……それだけでひどく幸せだと思った。