次に目が覚めたら、恭が目の前にいてくれた。
……正確には、その前に起きていたようなのだけれど、だいぶ意識が虚ろだったのかほとんど何も覚えていなくて。
ようやく落ち着いて、ゆっくりお風呂に入らせてもらった。
お父さんは、お母さんを追い込んだ犯人が、ここに住んでいることを知らなかったのだろう。
……だって、運悪く同じマンションだなんて。
さすがに誰も思わないと思う。しかもわたしが紘夢と婚約をすることを伝えても二つ返事だったのだから、本当に何も知らなかったのだと思う。
「おかえり恭」
さっき、お風呂場に声を掛けに来てくれたけど。
もどってきた恭に近寄っておかえりを言ったら、「髪乾かさねーと風邪ひくぞ」なんてタオルで髪を拭われる。
「乾かしてくれる?」
「俺が? ……別にいいけど」
昔付き合ってた時も何度か髪を乾かしてくれたことがある。
乾かしてもらおうと洗面所にドライヤーを取りに行くと、リビングで「お願いします」と恭に手渡した。
「ん」
ダイニングの椅子を引っ張ってきて、そこに座る。
コンセントに差し込んだ恭が、ドライヤーのスイッチを入れた瞬間。
「……怖いか?」
わたしがビクッとしたことを、彼は見逃さなかったらしい。
一瞬でスイッチを止めて、わたしの顔を覗き込んでくる。
「大丈夫……だと、思う。
なんか、大きい音に、びっくりしちゃって」
さっき洗面所でドライヤーを落とした時もそうだった。
鏡の前でフラッシュバックを起こしたのもそうだけど、落ちた音にもかなりびっくりした。普段なら有り得ないことだから、過敏になっているのがわかる。



