目が覚めたら、知らない場所だった。



「こ、こ……どこ?」



なんだか頭がくらくらする。

恭にマンションまで送ってもらって、それ、で。



「っ!」



ガチャ、と扉が開いたかと思うと。

入ってきたその人は、記憶の最後にある人物。どこも拘束されていないのに、よくわからない恐怖で、何一つ動かなくなった。



「は、つせ、さん」



そうだ。エレベーターにこの人と乗ったあと。

何かハンカチのようなもので口を塞がれて、そのあとの記憶がない。……ここは、一体、どこ?




「目が覚めたみたいだね」



「ど、ういう、ことですか」



わたしが寝かされていたベッドと。

窓以外に、何も無いコンクリート作りの部屋。天井は打ちっぱなしになっていて、無骨なその雰囲気が、とても怖かった。



「どういうことって……

思い当たる節は、何もないかい?」



「………」



思い当たる、節。

初瀬さんに関わることで言えば、「紘夢と付き合って、別れたこと?」くらいしかない。……そもそもわたしは、この人と会ったこともほとんどない。



「そうだね。わたしの息子と、君は付き合ってた。

……しかも君は、うちの息子の婚約者だった」