「彼女に何かあったんですか」



「……親しいご友人でしたら、それはまた後日、」



「っ、やだっ、離して、さわらないで!」



おそらく俺らを家に入れたくないらしい、"黒田さん"。

なんとなく追い返されそうになっていた時、リビングからガシャン!!という大きな音ともに、鞠の泣きそうな声が聞こえた。



「……、今日は帰って頂けますか」



誰だって、鞠がおかしいことはわかる。

普段声を上げない鞠が、何かを拒絶してる。



そんな状況で帰れと言われて、帰れるわけがない。

ひとまず家にいることには安心したけど、ちゃんと鞠の姿を見ないと、何も安心できない。




「親しい友人がダメでも、恋人なら入れますよね?」



「……、」



「恭。……俺らは良いから行っておいでよ」



なずなのゴリ押しに、黒田さんはどうやらなにか思ったようで。

「わかりました」との末に、結局全員を中に入れた。



「ただ……、お嬢様はショックを受けられています。

父親である社長も、さっきから近づけません」



「、」



「……事情は後ほど」