そこまで言えばもう、言いたいことはわかったらしい。
それで婚約者かよ、と、ため息をついた恭は。
「お前、俺のこと好きなんだよな?」
「……そうだけど」
「婚約なんてしたくねーんだよな?」
「……まあ、そりゃあ、」
「……じゃあ俺と婚約すればいいんじゃねーの」
とんでもないことを言い出す。
自慢みたいであまり言わないけれど、橘花コンツェルンはかなりの権力を持つ会社だ。仮に一般企業の社長が相手だろうと、婚約者なんて許されないと思う。
「恭、あのね、」
「言わなかった俺が悪かった。
……別れた理由がそれなら、俺はとんでもなくお前と離れた時間を無駄にしてる」
「………」
「俺はフルールジャパンの社長の息子だよ」
……またとんでもないことを言われた気がした。
フルールというのは、世界中に馬鹿みたいな大きさの会社を持ってるグループだ。貿易を主に、いろんな事業を手掛けている、とんでもない企業。
先に言おう。橘花でさえ敵うかわからない。
最も、フルールのグループ本社は日本にある。その理由は、創設者が日本人であるから。つまり、大きすぎるフルールグループの中でも、最も権力を持っているのはフルールジャパンなのだ。
「……ごめん、ふざけてる?」



