「今日、蒔泊まりに行ってるし。
……いっしょに帰れば、ふたりきりだけど」
「、」
「……いまから帰る?」
我ながら、ひどい女だと思う。
はやく「好き」だと伝えたらいいのに、こうやって恭のことを振り回して。でも、わたしに夢中になってくれるその顔が見たいなんて、どうかしてる。
「……、続けれねー関係ならやめとこうぜ」
恭の手が、わたしから離れる。
触れてくるくせに踏み込んでこない恭も、わたしと似たようなものなのかもしれない。
いつまで経っても、お互い踏み出せない。
「……もう飽きた? わたしのこと」
「まさか。すげー好きだって言ってんだろ」
プールとプールサイドの際。
そこにもたれかかった恭が、「ずりーな」と呟く。
「……キスはするし、俺がお前のこと好きかどうかも確認してくるのに。
肝心のお前は付き合う気ねーとか、何のトラップだよ」
「………」
「俺はお前と恋人にしかなりたくない」
それ以外の関係にはなりたくねーよ、と。
ボーダーラインを引いてくる恭。きっとわたしが紘夢と離れられずにいると、思っているんだろう。



