呑まれてしまいそうになる。
この雰囲気にも、目の前のこの人にも。
ダメだとわかっていても、もう止まれない。
……傷つくとわかっていても、それでも好きだ。
「いいよ、って、言ったら……?」
「………」
時間が止まっているみたい。
恭のことしか見えなくて。恭もわたしのことだけ、じっと見つめてくれていて。
「……期待させんなって言っただろ」
苦しげに眉間を寄せるから、どうしようもなく抱きしめたくなった。
浮き輪をぽんと外して、そのままぎゅっと恭の身体に腕を回す。
「してくれたらいいでしょ?」
「お前なあ……」
「もっともっとわたしのことだけ考えて」
抱きついたまま顔を上げると、恭と目が合う。
恭の片腕がわたしを抱き寄せると、もう片方の手はわたしの頬を撫でた。
「……じゃあ、お前も。
もっと俺のこと考えてろよ。不公平だろうが」
「もう考えてるよ。
……出会った時から、ずっと考えてる」
恭が好きになってくれるよりも前から、わたしは恭のことが好きだ。
その時からずっと。……変わらず、あなたのことで頭がいっぱいなのに。



