「顔真っ赤」



「誰のせいだと……!」



ようやくわたしをおろしてくれた恭が楽しそうに笑ってるから、ロクに文句も言えない。

その表情にわたしが弱いことを、知ってるんだろうか。



「ん? 誰のせいなんだよ」



不貞腐れながら浮き輪で浮かぶわたしと、目線を合わせて顔を近づけてくる恭。

あまりに綺麗な顔で、恥ずかしいのに今度は目も逸らせない。



「恭、の、せいじゃん……」



そのせいで、よくわからない言い方になるし。

そんなわたしに、恭は優しく目を細めて笑って、「そーだな」なんて言ってるし。




「……、恭のばか」



「急に口悪いな」



いつなら、恭に好きだと言えるだろう。

どのタイミングなら、言って赦されるだろう。



「……あ。あれお前が好きそう」



「え?」



恭が指さした方に、視線を向ける。

その瞬間、左の頬にやわらかな感触が触れた。



……うん?