もっともっと意識してくれたらいいのに。

恭の頭の中が、わたしだけになってしまえばいい。



「……、うるせー。入んねーのかよ。

いつまでもこんなとこにいても仕方ねーだろ」



今日は平日だからか、来ている人のほとんどは学生だ。

カップルも多いし、きっとわたしと恭も、周りからはそう見えていることだろう。



「入る。何していいかあんまり分かんないけど」



この間は蒔の付き添いだったし、みんなが遊ぶプールでがっつり泳ぐ人もいない。

カップルならそこそこイチャついてるけど、わたしと恭は今のところカップルじゃない。



とは思いつつ、促されて水に入る。

恭も一緒に入ってくれたのだけれど、このカラフルな水着を着た人がいるプールの中でも、やっぱり恭は目立っていて。



……あっちの女の子グループ、がっつり恭を見てる。




パシャッ。

なんだか恭のことを見られているのが気に障って、彼に向かって水を掛ける。と、しっかりやり返されて。



「っ、なにするの」



「お前が先にやったんだろーが」



「でも女の子の顔に水掛ける?」



「はいはい」



ゆらっと交わされたのが癪で、もう1回。

当然やり返されて、何度もふたりで水を掛け合うのを繰り返したせいで、いつの間にかびしょびしょ。



前髪から、ぽたぽた雫が滴る。

恭は恭で濡れた髪を鬱陶しそうに掻き上げる姿が様になっていて、水も滴るいい男っているんだな、と思った。