「お姉ちゃん、いくよー?」



「あと3分待って!

お手洗い済ませた? その間に行ってて」



「……もう行ったよぉ」



1泊分の荷物を背負った蒔が、わたしの部屋の扉を開けて覗き込んでくる。

普段なら急かすのはわたしなのに、めずらしく急かされているわたしは、絶賛巻き髪を整えている最中で。



「……でーと?」



蒔にそう言われてしまうくらいには気合が入ってるらしい。

……否定したいけど、無理もない。



服もいつもよりなんだか女の子らしいものだし。

ほとんどノーメイクで、普段は日焼け止めとビューラーくらいしかしないのに、ばっちりメイク。もちろんウォータープルーフ仕様。




挙句、水に入るのに結んだ髪は巻き髪だし。

気合が入ってることは、まったく否定できない。



「さて、行こっか」



「うんっ!」



ポニーテールのてっぺんには薄紫のリボン。

ゆるく巻かれた毛先が動きにゆらゆら揺れるのを確認して、最後にリップを塗ると椅子から立ち上がった。



荷物の入ったバッグと手土産の紙袋を持って、蒔と家を出る。

もう片方の手を繋いだ蒔は、今日も楽しそうだった。



「蒔はできると思うけど、いい子にするのよ」



「ちゃんとできるよぉ」