数コールの後、『はい』と聞こえた声は、穏やかではあったけれど、なんだか張り詰めている気がした。
……あ、何言うか、考えてなかった。
「えっと……鞠、です」
『は!?』
「ちょっ、声大きい……」
耳元で大声を出されたものだから、思わずビクッとしてしまった。
それに「悪い」なんて言われるけど、なんだか電話の向こうで声がする。……もしかして、まだ、藍華のみんなと一緒にいるんだろうか。
「……ごめん、タイミング悪かった?
みんなと一緒なら、またあとで構わないけど、」
というか、あんまりみんなに聞かれたくない。
別に理由はないけど、なんか恥ずかしいし。
『いや、別に。どした?』
途中でドアの開閉音や、足音が聞こえる。
どうやら外に出てくれているらしく、最後にガラガラと大きな音がしたあと、電話の向こうは静かになった。
「……大したことじゃ、ないんだけど、」
どした?と聞いてくれる声でさえ、優しい。
さっきまでの緊張が嘘みたいに、安心する。
「……出掛ける約束、したから。
いつにするか、とか、場所とか、決めるかなって」
紘夢と別れたことは、彼の要望もあって、まだ話してない。
それでも、わたしの気持ちがかなり傾いていることも、恭はなんとなくわかってると思う。
『あー……ん、そうだな』



