「ねえ、恭。食べたいものは?」



売店の前で何を買うのか決めていたら、そんなことを言い出す鞠。

横を見れば彼女はメニュー表を見つめていて、俺の視線に気づくとこっちを見る。



ようやく、鞠と目が合った。



「っと……あの、そう、ごはん奢るって言ってたから。

何か食べたいものあるのかと思って聞いたんだけど……?」



「……なあ、」



お互いの間に流れる空気をかき消すように、鞠がまた口を開く。

その質問に答えずに声を掛ければ、目の前の瞳が不安げに揺れた。



この瞬間も、無理やり奪ってしまえたらと思う俺の気持ちになんて、気づいてないんだろう。

いつまでも変わらずこの関係を続けることなんて、俺には不可能だと思う。




出会わなければよかったのに。

再び出会ってしまったなら、もう手を離せない。



「それ、ナシでいい。むしろ飯くらい奢ってやる」



「でも、」



「だから代わりに、一日俺にくれよ」



ぱちぱちと、鞠が目を瞬かせる。

言い淀むように視線を泳がせて、明らかに困ってる。でも、嫌がってるわけじゃないってことを、俺はわかってる。



「……お断り、するわ、」



「じゃあ、」