「………」
プールも海も、付き合ってる間に行ったことはない。
俺と鞠の出身中学はプールが男女別の時間だったし、知っての通り俺は授業に出ていないから、当然彼女の水着姿を見掛ける機会もない。
だから……正直、見てぇ、けど。
「じゃあ、着替えに行こっか。
……更衣室出て、またあとで合流しよう」
"この男"が一緒に居んのが、気に食わねーな。
俺らはあくまで"同じ日にプールに行くことを装った護衛"で。鞠は蒔と、"あの男"との3人で、ここに来ているようなものだ。
鞠たちと会ったのは、ついさっきだけど。
ずっと蒔が"あいつ"に懐いてて、すげー腹立つ。
隣にいてくれる鞠と、懐いてくれる蒔。
そのポジションにいられたのは、俺だったのに。
「ええ、そうね。……蒔、行きましょうか」
「うんっ、はやくはやくー!」
あすみ達と、たった一言"おはよう"を交わしただけの鞠。
でも"あいつ"と蒔とは3人で楽しそうに話してるし、時折笑顔も見せてる。
……1回も、鞠と目が合わない。
俺のことを振ったわけだし、気まずいのはわかる。
わかってるけど、なんかすげーモヤモヤする。
「……、」
怪我したことを知った時、本当に心配して駆けつけてくれた鞠の面影を、見つけられない。
付き合っていた過去の事実さえ、まるで泡沫に消える。



