それは突然の、報せだった。

大音量で音楽が流れたことで目が覚めて、まだぼんやりした頭のまま身体を起こす。



隣にいる蒔がすやすや眠っているのを見て、そこでようやくハッと頭が覚醒した。

……っ、はやく止めないと起こしてしまう。



音の発信源は、普段鳴ることのない自宅の電話。

こんな朝方から掛かってきては、薄い壁の向こうの隣人にも迷惑をかけてしまうと、慌ててわたしは電話に出た。



「……もしもし、」



『あっ、鞠ちゃん?

こんな朝早くにごめんね、実は……っ』



電話の相手は、お母さんの仕事先のママさん。

わたしと蒔のことを本当の娘のように大切にしてくれている人で、少なくとも年に一度は機会を作って会っていたから、すぐに相手がわかった。



そもそも、この家にはお母さんとママさん以外の誰も、電話をかけてこない。

そんなママさんの焦った声に、首をかしげる。




「何かあったんですか……?」



『愛ちゃんがね、仕事上がって帰ろうとしたらいきなり倒れちゃったのよ。

店は任せてわたしも救急車で病院に来たんだけど、』



ひやり、と、身体の内側が冷えるような気分だった。

どこか焦っている声なのに、それでもわたしのことを安心させるみたいに、ママさんはゆっくり穏やかに話そうとしてくれた。



「た、たおれた、って……」



『鞠ちゃん……』



頭がガンガンする。

それ以上聞くなって、言われてるみたいだった。



聞いたらきっと後悔する。

……なのに、聞かずには、いられなかった。