「じゃあ、帰った方がいいんじゃねーの?」



「………」



「鞠?」



呼び出されて来たものの、俺の怪我はそこまで大したことじゃない。

だから蒔のために早く帰ってやればいいのに、鞠はふるふると首を横に振る。それから、触れたままの手を、そっと絡ませるように握って。



「もうちょっと、いっしょにいる……」



「………」



「突き放して、出てきちゃったから」




いますぐには帰りづらい、って。

そう言った鞠の頭の中には、誰がいるんだろうか。



「……いてもいいけど、遅くなるぞ」



「……だいじょうぶ」



うなずいた鞠を、じゃあいいかとひとまず座らせたとき。

「片付けやらしてこねえとな~」なんて、暖とチカが席を立って部屋を出ていく。



「俺も作業してくるよ。

あすみも、負傷の確認とかしなきゃいけないでしょ」



「ああ、そうだな」



「俺も、お前の手当て終わったから帰るわ。

さっきも言ったけど念のため病院行けよ。……どうせなら、西澤一緒に行ってやって」