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「蒔、俺の大事な話聞いてくれる?」
児童館から蒔が出てくるであろう時間を見計らって、鞠と一緒に迎えに行った。
そのあと買い出しに行ったら、蒔と話をして帰るつもりだったのに。
鞠に「どうせならご飯食べて行って」と引き止められて。
ありがたくその好意を受け取ることにした俺は、リビングで宿題を広げている蒔にそう話しかけた。
「おはなし?」
「うん。……蒔には難しいかもしれないけど」
「だいじょうぶだよー」
ふわりと笑ってそう言ってくれる蒔の愛らしい笑みを見ていたら、俺も安心する。
鞠の妹がこんなに明るくて優しい女の子でよかったと、頭の片隅でそう思った。
「蒔、好きな男の子いる?」
「……? いっぱいいるよ?」
……おっと。これは俺の言葉の選び方が悪かったな。
子どもだから、というか、友情含めてだから許されるけど、恋愛目線で聞いた時にその答えはさすがにマズい。
「それは、おともだちの男の子もふくめて、だろ?
そうじゃなくて、んー……ほかの女の子に取られたくない、いちばん大事な男の子、いる?」
改めて、好きな人という言葉の定義について話すとなると難しい。
「恋」とか言ったって、小学1年生にはまだ早いかもしれないし。
「うんっ、いるよー」
にこにこ、笑顔でうなずいた蒔。
夕飯のひとつらしい惣菜の乗った小皿をダイニングテーブルに置いた鞠が「いるんだ」と零したのを、俺ははっきりと聞いた。



