「何もかも俺が強引に進めたから、お前は悪くない。

でもお前のこと好きすぎて、俺ももうどうしていいかわかんねえよ……」



不規則に乱れた呼吸。

瞳は苦しそうに細められて、わたしに答えを乞う。



それを見ていたら、自然と気持ちは落ち着いた。

冷静になってその背中に腕を回すと、自分の方に抱き寄せる。それに逆らうこともしなかったハセは、何も言わないでその腕の中におさまっていた。



「……ごめんね」



「、」



「付き合って……余計に苦しませた」



どれほどハセがわたしを想ってくれているのか、わたしなりに理解しているつもりだった。

だけどそれがどんなに理性と抗った感情なのか、わたしはとっくに知っていたはずなのに。




「……わたしの立場とか、蒔のための世間体とか。

そんなことばっかり気にして、好きだって言ってくれてるのに、気持ち考えてあげられなくてごめんね」



「……鞠が、蒔のこと大事にしてんのはわかってる」



「うん、それでも。

……そうやって甘えさせてもらってばかりで、わかってるつもりでわかってなくて、さっきも手振り払って傷つけたでしょ」



そっと頭を撫でたら、ハセは顔を上げて首を横に振る。

それから、落ち着いたように小さく「ごめん」と謝った。



「鞠の元カレ見たら、気持ち焦って、色々取り乱した。

無理やり連れてきて、怖かっただろ?」



「うそ。……何にも大丈夫じゃないくせに」



「、」