……まずい。

わたしとあすみくんはわたしが藍華と少なからず関わってしまった事実を翌日のファミレスのことにすり替える打ち合わせをしたけれど、ハセとはそれをしていない。──つまり。



「だから余計なことに首突っ込むな、っつったのに」



ハセはわたしの立場が危うい理由を、あの日の喧嘩だと知っている。

しかも、よりによってハセの知らないところでみんなと会ってたなんて、言えるわけもないし。



「あすみ。お前なんか俺らに隠してるだろ?」



やけに勘のいい恭が、的確にあすみくんを名指しした。



「……お前ファミレスで鞠と会った時、なんか話してたよな?

そのときから、変だとは思ってたんだよ」



綺麗な顔は、浮かない表情のままで。

薄いため息を吐く彼を、認めてしまうんだろうかと思わず見つめていたら、彼はおもむろにわたしに手を伸ばした。




「確かに隠し事ならしてるな。

……まさかお前に、"狙ってる"なんて言えないだろ?」



顎先を掬われて、一気に距離が縮む。

くちびるが触れてしまいそうなほどの距離感。



ほどよく香ったその匂いに、酔いそうになった。

……狙ってる? だれが、だれ、を?



「は? お前、」



「なあ? 鞠」



まるで、愛でも囁くみたいに。

わたしの名前を甘く呼んだあすみくんに、どきりとしてしまう。



……正直に、言おう。

あのファミレスでの件以来、あすみくんからは毎日夜に連絡がくる。何かに巻き込まれていないかの確認をするだけで、本当に"念のため"の電話。