何か呆れられたわけでもない。
ただ"変わった"って、そう言われただけなのに。
「違、っ……」
離れた手。咄嗟に出た言葉。
そのわたしの反応を、ハセが一瞬驚いたような顔で見た。
「鞠……?」
「っ、」
わたし、いま、なにした……?
流れる微妙な空気と、堅くなるハセの表情。
お互いに行き場を失ったその手を見れば、わたしが振り払ったことは明らかだった。
「っ、ご……」
"ごめん"、なんて。
容易い言葉で謝るようなことはできなくて、くちびるを噛む。……昔付き合っていた男の言葉に動揺して、彼氏の手を振り払うなんて、そんなの最低に決まってる。
「……行くぞ」
ぽん、と。
わたしの頭を撫でた、優しくて大きな手。
「っ、」
思わず泣きそうになりながらハセを見上げたら、なんでもない顔をしてわたしの手を引いてくれた。
間違いなく傷つけたのに、ハセはすごくすごく優しい。
わたしには、もったいないくらいに。



