ぼろぼろと、口を突いて出るそれは、まるで言い訳しているみたいだった。
わたしにキスのことを指摘したのはあすみくんなのだから、彼に向けて訂正すればいいはずなのに、細められた恭の瞳から外せない視線。
そもそも、いまのはハセが突然キスしてきたから……
「髪色どうこうなんて、別に知らないけどさ、」
あ、れ。
でもなんで、ハセはこんな急にキスしてきたの?
「俺がどこで"彼女"にキスしようが、自由じゃん?」
「……彼女?」
「そ、彼女」
いまから彼の家に行くんだから、ふたりの時間ならたっぷり存在する。
なのにハセが、今ここでキスしてきたその意味。そして彼等を見る、ハセの、わざとらしすぎるくらいに挑発的な態度。
……気づいてる。
この中に、わたしと付き合ってた人がいること。
以前喧嘩の仲裁に入ろうとしてあすみくんと会ったとき、ハセも一緒だったから。
なんとなく、流れで悟ったんだろう。
「ハセ……悠長に話してないで行こ」
彼の手を、くっと引いて。
意識を逸らすように言えば、ハセは「わかった」って返事してくれる。だからその場を、何も言わずに去ればよかったのに。
「……随分と変わったな」
ぽつり。
何気なく落とされた恭のつぶやきを、わたしの耳が拾った。



