バランスを崩して、その胸になだれ込むわたし。

とっさに胸に手をついて顔を上げたら、いきなりキスされた。



「っ、」



なに考えてんの……!?

公道ですぐそばに人がいるのに、遠慮のないハセからのキス。



拒もうとしたけど舌までキツく絡め取られて、腰が抜けそうになる。

突き放そうとした手すらも掴まれて、角度を変えたくちびるの隙間で甘い吐息が漏れる。



そのまま崩れ落ちそうになった、タイミングで。

ようやくくちびるが離れて酸素を吸い込んだわたしは、文句を出せない代わりに彼を睨んだ。



人のいないところでふたりきりなら、百歩譲って許せる。

怒ってしまうだろうけど、それでもまだ許せた。



だけどこんな、人目のあるところ、で。




「え……」



小さく声が漏れたのは、驚きからか。



「妹のために髪色まで気にするのに、

こんな公の場所で目立つキスは許されるみたいだな?」



カッ、と、頬が赤く染まる。

そこにいた時点で見られていないなんて思ってはないけど、図星を指されたら途端に居た堪れなくなった。



あすみくんに、恭に……見知った顔ぶれ。

藍華の幹部であり、わたしと恭が以前交際していたことを知るメンバーたち。それだけでもう、この場から逃げ出したい理由としては十分だった。



どうしていつもいつも、タイミング悪く出くわすのか。

全員制服なのにこの時間にここにいるってことは、テスト期間がかぶりでもしてるんだろう。ついてない。



「いまのは……そう、じゃ、なくて……

たしかに、ちょっと軽率な行動ではあったけど……」