家すぐ下だけど、と。

笑って言うハセを玄関まで見送る。手を洗って出てきた蒔もそれに気づいたようで、わたしの後ろからひょこっと顔をのぞかせた。



「またね、ひろくん」



にこにこと笑う蒔の頭を、そっと撫でるハセ。

嬉しかったのか、蒔はさらに可愛らしく笑みを浮かべた。



「えへへ。今度蒔ともお出かけしてね?」



「ん、する。プールも一緒に行こうな」



「うん、やくそく!」



小指を絡め、「ゆびきりげんまん」で交わされた約束。

満足したらしい蒔の頭に手を乗せて、ハセを軽く見上げる。……なんだか、不思議な気分だ。




「……じゃあね」



「ん。……また学校でな」



名残惜しそうに放たれた一言は何の意味も持たない囁きだったのに、妙にわたしの頭の中に残る。

当たり前に訪れる"またね"の約束に、わたしはいったい何を期待しているんだろう。



「……そろそろ入ろっか」



エレベーターに乗ったハセの姿が、見えなくなってすこし経ってから。

ふたりで廊下を引き返し、リビングにもどる。



「ごはんの準備するから、手伝ってくれる?」



「うん! おてつだいするよーっ」