静かになった部屋の中で、小さく息をつく。

カーテン越しに漏れる光はかなり弱くなっていて、日が落ちていることを部屋の中にも伝えていた。



「……いま、何時?」



「17時前」



はやく、元通りにしてしまわないと。

蒔はお利口だから、17時に帰ってきなさいと伝えてあったら、絶対にその時間に帰ってくる。



わかっていたから身を起こそうとすれば、

引き寄せられて一瞬だけくちびるが触れ合った。



「……なんの冗談?」



口をついて出るのは、可愛げも何も無いセリフ。

それにはさすがにムッとしたみたいにハセが眉間を寄せるけれど、それに構っている時間さえ惜しい。




「ぜったい、蒔に余計なこと言わないでよ」



クローゼットから、ラフな服を取り出してそれに着替える。

ハセが「べつに言わねえよ」なんて軽い言葉で済ませるから、本当に?と聞き返そうとして、やめた。



……疑ってばかりじゃ、どうしようもない。

仮にも、向き合うって、決めたはずなのに。



「ちゃんと、服着てから出てきてね」



姿見で全身を確認して、ハセを振り返る。

玄関から鍵を解錠する音が聞こえてきたから、蒔はどうやら時間通りに帰ってきたらしい。



とってもお利口な、わたしの妹。

彼女を迎えるために部屋を出ると、蒔はわたしの姿を見るや否や、笑顔で駆け寄ってきた。



「ただいまぁっ」