「兎羽、教えようか?」



「…お願いします。」


なんでこの人はわかんなくなって諦めようとしたタイミングで声をかけられるんだろう。


やっぱり心が読めるんじゃ…なんて現実離れしたことを考えつつレオ先パイにテキストを見せる。



「ここはこうやって場合分けして…。」


優しい声色で丁寧に説明してくれた。


もちろん超わかりやすかったです。はい。





その後も各自勉強を進めて、18時前になった頃、勉強会はお開きとなった。


「ありがとうございました。」


「それは何に対して?」



「…え?」


まさかお礼に質問が返ってくるとは思ってなかったから動揺してしまう。


対して先パイはにこにこといつもの余裕な笑みを浮かべていた。



「俺が兎羽にすることは全部俺がしたいだけだから、

 兎羽がお礼を言う必要なんかないんだよ?」



「…意味がわかんないです。」


「今日だって兎羽のことたくさん知れたしね。

 うるさい奴らの相手をする手間を考えても今日はプラスだ。」


「は、はぁ…。」


ぜんっぜん意味がわかんないんですけど。



私が困ったような呆れたような顔をしていたからか、レオ先パイは私の頭をくしゃっとしてこう言った。




「…いつか、兎羽に理解してもらえる日が来るといいな。」


「え…?」




「とわー!帰るよ〜!

 置いてかれたくなかったらはーやーくーっ!」


「ほら。リンが呼んでるよ。

 もっと一緒に居たいけど、それはできないでしょ?」



「…お邪魔しました。」



頭に感じていたレオ先パイの手の重みがなくなった瞬間、くるっと振り返って凛ちゃんのもとへと駆け出した。