パーティー会場と思しきところに入って30秒。


レオ先パイの隣から追い出されました。



え、言葉を信じようと思った私が間違い…?



隣に戻ろうにもたくさんの大人がレオ先パイを囲んでいて無理そうだ。



ぐるっと会場を見渡してみたけど、何から何まで高級そうで手が出ない。


料理が置いてあるテーブルがある方からいい匂いがするけど、緊張で食べれそうにない。




仕方なく壁際に立ってレオ先パイが来てくれるのを待つことにした。



でもなんでいきなりパーティーに私を連れてきたんだろう。


早く私にパーティーとかそういうものに慣れてほしいから?


それとも是非うちの娘を…とか言って婚約者を薦められてるのかな?



まさかレオ先パイに限って思いつきとかないよね…?




もんもんと考えていたら自然と目線が下がっていたようで、自分が何かの影に入ったことで現実に意識が戻る。



顔を上げると、鋭めの目つきのイケメンがこちらを向いて立っていた。



「風越…さん…??」



「お、覚えててくれたんだ。

 サンキュな〜。」


にっと笑顔を見せながら反応を返してくれる。


よかった。名前あってたみたい。




「どうしてここに…?」


もしかして風越さんもイケメン御曹司的な人なの?



咲雪さんの彼氏さんってことしかわからない。



「あー、玲旺から聞いてねぇの?」


「は、はい。」



「…なんて言われてここに来た?」


「え、私ですか?

 えっと…、何も説明されてないような…?」


「マジかよ。」



「お父さんの代わりに出なきゃいけない

 パーティー?としか…。」



「玲旺って、説明することがめんどくさいタイプ?」


「失礼ですね。

 そんな訳ないじゃないですか。」


あ、レオ先パイ。


やっと囲まれるのから解放されたみたい。




「じゃあなんでコイツに説明してやらねぇんだよ。」


「驚くかなって。」


「あほか。

 いきなりこんなとこ連れてこられたら

 驚く以前に混乱するわ。」



「…そうなの?」


いや、そんな意外だって顔でこちらを見ないでください…。


さすがにレオ先パイみたいな完璧スペックを持ち合わせてないのです…。



事前に言われていて人並みの対応ができるかどうかの人にいきなりを強要したらいっぱいいっぱいになっちゃいますって。



「ふふっ、まぁいいよ。

 兎羽ならきっとどうにでもできるから。」


レオ先パイがそういった瞬間、会場内の人がざわっと騒ぎ始めた。



え、何…?



私達は割と会場の端っこにいるのに、すごく視線を感じる。



あからさまにこちらを見てこそこそと何かを言っているのがわかる。




「氷の玲旺様がこんなとこで

 素で笑ったらそうなるわなー。」


「その二つ名は兎羽の前では不必要ですからね。」



氷の玲旺様…。


パーティーでも無表情を貫いてたのかな。




「…そろそろ時間ですね。

 兎羽、手を出して。」


「?」


言われるがままに右手を空中に差し出す。



…とそれをレオ先パイは自身の左腕に絡ませた。



「なっ…!?」


目立つ!


これは絶対に目立ってる!



氷の玲旺様って言われてたんでしょ?



そんな人に腕を絡ませる私、絶対に悪目立ち。



「大丈夫だよ、兎羽。行こうか。」


私の気持ちを知らんぷりして歩き始めるレオ先パイ。



私と目が合ったんだから、絶対私の気持ちわかってるのに…!



たくさんの大人に注目される中向かったのはステージの目の前の丸いテーブルの席。


もう少し端っこがよかったな…。



きっとレオ先パイのおうちのランク的に前の方は確定事項なんだろうけど…。



「オレもここ座っていいか?」


「もちろんです。」


風越さんも同じテーブルについた。



そういえば結局風越さんはなんでここにいるんだろう?


わからないままなことに気がついた。



「あの…」


『お待たせ致しました!

 ただいまよりAURORA新プロジェクト

 記念パーティーを始めます!』


私が風越さんに聞こうとすると、ちょうどマイクを持った司会者さんが話し始めてしまった。



AURORAって確か、有名コスメブランドだよね。



とりあえず話せる状況じゃなくなったからおとなしくしてようっと。


司会者さんが簡単な紹介をした後に真紅のドレスが似合っている綺麗な女の人が現れてマイクを持った。



『皆さんお集まりくださり

 誠にありがとうございます!

 長い話は眠気の元なので

 早速今回のプロジェクトの目玉をお見せ致しまーす!』


明るくハキハキとしたその女性が右手を上げると、ほんのりピンク色に染まったふんわりしたドレスを身に纏った女の人が現れる。



あれ…?もしかして…!
 

そう思って風越さんを見るとなんだかニヤニヤした表情をしていた。



あ、そうだった。


風越さんを見ても反応がわからないんだった。



というかなんでニヤニヤ?


どう見てもあの女の人、咲雪さんだよね?



ナチュラルメイクでもとてもかわいいけれど、今日は優しいピンクをベースにしたしっかりしたメイクをしている。


咲雪さんに施されたメイクが、AURORAの新プロジェクトの中身みたいだ。



私には詳しいことは理解できないけど、そのプロジェクト内容がすごいということだけはわかった。



冗談が混じえられた説明を聞き終え、会場は拍手に包まれた。





どうやらこれでお披露目会自体は終わりらしい。