「オレも玲旺と同じように、
何も感じない世界で生きてきたんだ。」
「えっ…。」
「玲旺は何も感じない事が当たり前なんだと
受け入れていたけど、オレは違った。
自分が異常だって、欠陥品なんだって、
ずっと思ってた。
いや、今も思ってる。」
「諒くん…。」
無表情で語る風越さんを見つめる咲雪さん。
何も感じられない自分は異常だ。
そう自覚した時の風越さんは、どんな気持ちだったんだろう。
悲しさも喪失感も感じられない中で、何を思ったんだろう。
「咲雪は、作り物でしかないこんなオレのことを
好きになってくれた。
オレが咲雪に対して
恋愛感情を持てないことを知っても、
こうやって隣にいてくれる。」
風越さんが咲雪さんの髪を撫でる。
でも、彼の瞳は恋人を映しているとは思えないほど無機質だった。
「オレは玲旺と同じ立場として、ここに呼ばれた。」
「わたしは、兎羽ちゃん側の立場かな。
って言っても、追いかける側か
追われる側かは真逆みたいだけど。」
ふんわりと微笑む咲雪さん。
同じ気持ちが絶対に返ってくることがないとわかっても隣に居続けられる。
それって相当強くないとできないよね…。
「はいはーい!
俺は場所の提供者ってコトで!」
ハイテンションなイブさんが言った。
…だいぶシリアスな雰囲気だったと思うんだけどな。
雰囲気をぶち壊していった。



