「お待たせしました。」
「さんきゅ!
んじゃ兎羽ぴょんこっち持って〜。」
「え…!?」
箱の蓋部分をおもむろに取り外した舜くんは、ピンクのトゥンカロンが入った方を私に渡してきた。
つい反射で受け取ってしまったけど、どうしたらいいの?
「レンズ見てー?」
言われるがままに舜くんのスマホのレンズを見ていると、3・2・1のカウントダウンと共に写真を撮られた。
「あ、どうせなら兎羽ぴょんらしく
うさみみがつくやつで撮ればよかったかな。」
「遠慮しておきます…!あと、これ。」
渡されたトゥンカロンを返そうとする。
「あー、あげるよ。
僕1個で十分だし、
写真一緒に撮ってくれたお礼代わりに!」
「あ、ありがとう…?」
「…おしっ、写真送っといた。」
「ありがとう。」
2度目のお礼は動揺せずにちゃんと言うことができた。
またな〜、と軽く手を振りながら他の部活動の企画の方に歩いていった舜くん。
廊下とかですれ違うと挨拶してくれるけど、それだけの関係だったから、未だに舜くんのことはよく知らない。
でも、さすがクラス委員長に選ばれるだけある。
久しぶりの私相手に、普通に話しかけて、普通に写真を撮って去っていった。
コミュニケーション能力が高くない私にはやれそうにない行動だ。
舜くんにもらったトゥンカロンの蓋を戻し、私の私物が置いてあるところに加えておいた。
ちょっとびっくりしたけど、続きも頑張ろう!
気合を入れ直して、再び接客を始めたのだった。