「さて、じゃあ帰るか」

キタ!帰るコール!!
今しかない……今言うしか……!!

「あ、あの、主任……。私今日は、家に帰りたくない……」

こっこっこんな恥ずかしい台詞言ったの初めて!
最後の方は尻すぼみで、消え入りそうな声になった。

「……それはよかった。最初っから俺の家に帰る予定だからな」

は、はい?
キョトンとして、伏せてた顔を上げ主任を見つめる。
それは一体、どういう……。

「迎えに行く前に、お前の母さんに電話したんだ。今日はお前を帰したくないってな」

お、お母さんに!!

「そっそれで、母は何と?」

「『それなら、まひろを迎えに行く前にうちに寄ってね。お泊りセット要るでしょ。忘れたの?女にはいろいろあるんだからね』って言われて。マンションに着いたら新が下で待っててくれたから受け取ってきたんだ。ほら後部座席に」

勢いよく後ろを振り返ると、私のバッグに入ってるらしい"お泊りセット"があった。

「そっそれよりも、吉田先生は!」

「父さんならいないけど。いるのにまひろを連れ込めるわけないだろ。帰って来るのは日曜だから大丈夫。心配しなくてもちゃんと2人きりだ」

え、そうなの?
でも吉田先生に無断で泊まらせてもらうなんて訳には……。

「父さんが不在の時はいつでもまひろに泊まりに来てもらえって、いつも言われてるから」

ま、また心の声が漏れてる?
やっぱり主任ってエスパーだよね……。

「父さんはまひろのことを家政婦か何かと思ってるんじゃないか?」

くうっ……その一言は余計!!
むくれて主任を睨みつけ文句を言いたいけど、照れたような赤い耳が目に入り唖然としてしまって言葉を失う。
余裕綽々なのかと思いきや、実際はそうでもなかったり。
そういう意外性がまた、好きなんだろうな……私。

「家政婦でもいいですよ?私は」

「ダメだ。まひろは俺の……」