更に盛り上がる列席者たち。
これじゃスピーチっていうよりも余興みたいになってしまったけど……。

「さぁ、イチにぃ!ここは男らしく決めてください!!」

観念したのか立ちあがって菜津美の手を取ったイチにぃ。
ゆっくりと菜津美が立つのをを待ってから、顎に手をかけた。
どよめきが一際大きくなる。

「それでは10秒コールいきます!皆様どうか御唱和ください。せーのっ!!」

1……2……3……。
こっちから煽ったとはいえ、やってくれるわ……イチにぃ。

私のファーストキスをイチにぃに目撃されてしまった仕返しってわけではないけど。
イチにぃと菜津美の本気のキスを見せられて、もう何も言う事はない。

昔の淡い恋心も、完全に過去の思い出。
どうか幸せに……。

……8……9……10!!

「はいっ!ありがとうございました!!これで皆様が2人の愛の証人ですから、イチにぃと菜津美の愛は永遠のものとなるでしょう。ちょっとしたサプライズでしたが、私からのお祝いとさせて頂きます」

イチにぃ……。
菜津美が持ってるのは片道切符なんだからね!
もう有田家には戻れないんだから、大事にしてよね。

まだ会場がざわついているからドサクサに紛れて、今のうちに主任のところへ……じゃなかった。
自分の席に戻ろう。

「あっ、蘭様、お待ちください!今から私が新郎新婦にインタビューして参りますので、そのままで!!」

司会者の人がそう言って小走りに行ってしまった。
え、何?私まだここにいなきゃダメなの!?
もう出番は終わったんだから……。

佐伯主任、私のスピーチ聞いてくれてたよね。
どう思ったんだろう……気になる。
ああ早く席に戻らせて!
これじゃ私が片道切符じゃないの……。