私の妊娠を知ってからの翡翠の行動は早かった。

お父さんと菖蒲さんに連絡をし、妊娠の報告と籍を入れると告げ

その日の内に、浅葱さんが婚姻届の用紙を持ってきて、有無を言わさず

記入させられた婚姻届けは浅葱さんによって、区役所に届けられ受理

され、私は “笠井瑠璃” から “阿部瑠璃” になった。

結婚した嬉しさと共に思ったのは・・・

翡翠に普通に戸籍があったという事実。

「今更なんだけど、翡翠って“阿部”って苗字だったんだね。

 戸籍があるのもビックリだったんだけど」

「あ~、それなあ。

 俺の先祖に阿部っていう妖狐と人間のハーフがいたんだよ。

 それから俺達一族はこっちの世界では阿部って名乗ってるんだ。

 戸籍は、親父たちがこっちで生活するのに作ったらしい。」

「そうだったんだね。」


私は翡翠の前に向かい合い、真直ぐ顔を見た。

私の改まった様子に、翡翠も真直ぐに私を見つめる。

「阿部翡翠さん・・まだまだ至らないところもある私ですが、

 これからもずっとあなたの隣にいさせてください。」

私の言葉にふっと微笑み、翡翠が口を開く

「阿部瑠璃さん・・・これからも瑠璃を幸せにします。

 ずっと俺の隣で笑っていてください。」

見つめ合う顔に笑みがもれ、自然とお互いの唇が重なった。