「一北の制服、しょっちゅう変わるんだよ。女子学生の入学が少ないから、毎年どんどんお洒落になっていくんだ」

 「三門さんが学生だったときは、どんな制服だったんですか?」

 「セーラー服じゃなかったし、スカートはチェック柄だったよ、男も同じ柄のズボン」


 へえ、と目を丸くしながら相槌を打つ。三門さんの母校も第一北高校だ。

 こちらに進学することを決意した時にその話を聞いて、第一北高校を第一希望にする決め手のひとつにもなった。


 「お母さんたち、今日の入学式には来れないんでしょう?」


 はい、と頷く。両親は仕事の都合でどうしても今日は来れないらしい。ふたりともとても残念がっていたけれど、どこか気恥ずかしさもあったのでちょっと安心した。


 「何時からだっけ、時間大丈夫?」


 あっ、と声をあげて時計を見上げた。詩子との待ち合わせ時間までもう少ししかない。

 慌てて「ご馳走様でした」と手を合わせ、食器を台所へ運ぶ。居間のすみに置いていた、春休みにお母さんにかって貰ったばかりの黒いリュックサックを背負う。

 くるりと振り返った。


 「い、行ってきます」

 「はい、いってらっしゃい。気を付けてね」


 小さく手を振った三門さんに微笑んで、居間を飛び出した。