『一北の弓道場に来ています。ホームルームが終わったら連絡ください。』


 授業が終わってスマホの電源を付けると三門さんからメッセージが届いていた。

 どうして弓道場? と首を傾げながらも「今終わりました」と返事を送るが、一向に「既読」の文字が付かない。鞄に荷物を積めると、教室を出て弓道場へ向かった。


 校舎と反対側にある弓道場へは、外から中を覗いたことがなかった。


 フェンス越しに中の様子を窺うと、ふたつの人影が見える。弓を構え、真剣な目で的を見据える横顔は、健一さんと三門さんだった。神職の装束とは違った深い紺色の袴に、筒袖の胴着姿だ。

 手を休め、ふとこちらに視線を向けた健一さんと目が合った。小さく頭を下げると健一さんは大きく手を振って弓道場の入り口を指す。


 入ってこいということかな?


 小走りで入り口側に回り、失礼します、と小声で呟きながら中に足を踏み入れた。どことなく本殿の空気と似た、背筋が伸びる木の乾いた匂い。靴を揃えて端に置くと、恐る恐る中に入った。


 「お疲れ、麻ちゃん」


 入り口の傍で待っていてくれたらしく、健一さんが迎えてくれた。