「────麻、麻?」
肩を強くゆすられてハッと我に返った。詩子が心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
「ご、ごめん。どうしたの?」
「話しかけてもずっとぼうっとしているんだもん。大丈夫?」
「あ、うん。だ、大丈夫」
「そう?」
まだ心配そうな顔をする詩子に微笑んで首を振った。先を歩いているみくりがちらりと振り返ったので思わず目を背けてしまった。
「もう着くぞ」
仁吉さんが富岡くんに渡したのは現世でいう住所みたいなものらしい。みくりが連れてきてくれたのは表の本通りよりもさらに奥まったところにある小さな一軒家だった。
「その紙が正しければここだな」
そう言ってみくりは私の足元に歩いてくる。手を伸ばして抱きかかえると、恐る恐る戸の前に立った。振り返ってみんなの顔を見渡す。富岡くんが一つ頷いたのを確認して、思い切って戸を叩いた。
「はい」と低い声が中から聞こえて、近付いてくる足音が聞こえる。がらりと戸が開き、現れた人物に私は目を見開いた。

