「二度と来んといてや」
扉にもたれて目を細める仁吉さんに、皆で揃って頭を下げた。溜息を吐いた仁吉さんの隣を、ずっと眠っていたみくりが欠伸をしながら通り過ぎる。そして私たちの前に出ると、さっさと次に行くぞ、と歩き出した。
私は仁吉さんに駆け寄った。
「あ、あの。仁吉さんって、いったい何者なんですか」
「見ての通りしがない薬売りのおとら狐やけど」
「それだけじゃ追放なんてならないですよね」
じっと顔を見つめると、仁吉はおかしそうにくすりと笑った。
「あんた、いろんなことに首突っ込むのやめといたほうがええで」
そう言って背を向けると家に向かって歩き出す。それ以上は言うつもりがないらしい。
小さくため息をついて背を向けたその時、右腕を強く引っ張られた。驚いて身を固くすると仁吉さんは私の耳元に顔を寄せる。
「────うちな、」
聞き終わると同時に勢いよく振り返る。もう既に仁吉さんの姿はなく、扉がぴしゃりと閉まった。

