仁吉さんはそんな私たちを一瞥すると無言で道具を直し始めた。
時間が伸びただけ、私たちに比べるとその時間は半分もない。それでも希望が見えたんだ。伸びた時間の中でまた何かできることが見つかるかもしれない。
詩子と手を握り合って喜んだ。
「もうええか? 話はまだ終わってないんやけど」
仁吉さんは私たちに背を向けて薬草の入った棚を整理しながら声をかける。慌てて口を閉じ姿勢を正した。
「お生憎、今は手元に雪童子用の薬がないんやわ」
「……薬売りなのに?」
「これやから勘がええ女は嫌いやねん。アンタは黙っとき」
仁吉さんに睨まれてびくりと肩を竦めて口を閉じた。
「いつも薬卸してもらっとるあんちゃんがおるから、そこ寄ってから帰り」
適当な裏紙にさらさらと文字を書いた仁吉は富岡くんにその紙を渡す。読めない文字だった。こちらの文字なのだろう。
「はい終わり、やれることはもう全部やった。さっさと帰って。これ以上の面倒ごとはごめんや」
鼠でも追い払う勢いで家から放り出された。

