「雪ちゃんと富岡くんも、大丈夫?」
こくりと頷いたふたり。
「そういや、富岡はここに来たことあるの?」
「いや、俺はずっと現世だから」
そんな話をしながら、私たちはゆっくりと通りを歩いた。
目的地には思いのほかあっさりと到着した。みくりの案内で通りをいくつか曲がって、表の通りよりも少し寂れた薄暗い裏路地の長屋の一番端にそこはあった。表に看板が出ている訳でもなく、隣の家と何ら変わりない。
「みくり、ほんとにここ?」
「疑う前に確かめろ」
ひとつ欠伸をしたみくりはするりと私の腕の中から飛び降りた。てくてくと歩き、器用に前足でその家の扉を開けると中に入って行ってしまった。
私たちは「どうしよう」とお互いの顔を見合わせる。その時、
「は!? なんでアンタがここにいてはりますん!」
どこかで聞いたことのある声が中から聞こえて、半開きの扉が勢いよく開いた。黄土色の長髪に着流し姿の、糸のように目の細い人がそこに立っていた。
「に、仁吉……さん?」
以前、裏山であったおとら狐の仁吉だった。

