────お前は陽の下を歩けない。大人になる前に溶けるんだよ。
それでもいい。新しい場所で暮らす。
────人の記憶に妖は残らない。蛍雪が消えれば、お前との思い出は残らないんだよ。
俺は。
────帰っておいで蛍雪。私たちの世界ならお前を悲しませるものはいない。お前を忘れたりしない。また兄やと一緒に暮らそう。
分かっている。妖の世界なら、俺のことを忘れたりする人もいない。死に嘆くこともない。
妖たちと一緒に生きるのは、人に比べたら楽に決まっている。でも、初めて人間と一緒に過ごした時、とても悲しくて逃げたくなるほど辛いことがあったのに、泣きたくなるくらい心地良かったのだ。優しくて、温かくて、幸せで。温かいということが初めて分かったのだ。
六花に背を向けるのはこれで二度目だった。
それでも俺は、人の傍で生きたいんだ。

