老夫婦はひとり行き倒れていた蛍雪から話を聞こうとしたが、蛍雪はかたくなに口を閉ざした。困ったように笑った老夫婦はそれ以上は聞き出そうとせず、甲斐甲斐しく世話を続けた。
やがて起き上がれるようになって、家を出て行こうとした蛍雪に老夫婦は「一緒に暮らそう」と話した。老夫婦は子どもに恵まれなかったらしい。
「でも、おれ、ちゃんと何も話してないのに」
言葉に詰まった蛍雪の頬を撫でた。
「何を悩んでいるのか、秘密にしているのか、そんなのは私たちには関係ないんだよ」
「そうさ。私たちは、お前と一緒に居たい、それだけさ」
ずっともとめていた“あったかい”の中に己の居場所を見つけたのだ。

