日の高い時刻を長いあいだ歩いた蛍雪は疲れていた。
暑さに目が回る感覚は季節が移り変わる時期によく経験したが、その比ではない。己が立っているのかすら分からなかった。また、体のあちこちの感覚が薄くなっていく。溶けるという感覚は六花からなんとなく聞いていたが、これがそうなのか。
何度も木陰で休んでいるせいで、一向に人里へたどり着けないでいた。
ぼんやりする頭で空を見上げた。目の奥が焼けるように熱い。
でも後悔はしていない。
「おい、坊主。大丈夫か?」
頬を叩かれるような感覚を最後に、ゆっくりと意識が途絶えた。

