六花は「必要以上に人と関わってはいけない」と言ったが、蛍雪をとがめることはなかった。だからあの日を境に、蛍雪は毎日太吉たちと遊ぶようになった。
いよいよ冬本番になるころには、子どもたち以外にも知り合いができた。たまに野菜を分けてくれるおばあさんや、太吉と一緒に悪戯を仕掛けて追いかけっこになるおじいさん。
妖の世界ではなかった経験に、蛍雪は毎日が楽しかった。
ある雪が積もった日、太吉たちと雪合戦をしているとひとりの大人の女が近付いて来た。太吉の名前を呼びながら近付いて来たその人は、太吉の首根っこを掴むと着物の汚れを叩き、「困った子だね」と顔を顰める。太吉は頬の汚れを手ぬぐいで擦られ、苦しそうにもがいている。
「暴れるんじゃないよ、全く。またこんなになって。ほら、アンタもいらっしゃい」
言われるがままに歩み寄ると、その人は蛍雪の頭に手ぬぐいを被せた。ふわりと甘い匂いがして、なんだろう? と首を傾げる。動くんじゃないよ、と言う声は柳が揺れる音と同じくらいにくすぐったい。

