家の前で六花が待っていた。恐る恐る歩み寄ると、六花は両手を広げて蛍雪を抱きしめた。蛍雪はこっそりほっと息を吐いた。
「おかえり蛍雪」
六花の優しい声を聞いて、甘えるように頬を寄せた。首に抱きつけば六花は軽々と抱き上げる。
「兄や、聞いて聞いて。ことろことろって知ってる? 太吉と花と、あとこんなにちっこい八重と、川の傍に行って、それからね。宗次郎はたべれる草にくわしくて、おれ初めて椿の蜜をたべたんだよ」
六花に抱きかかえられ家の中へ入った。勢いよく話す蛍雪に六花は困ったように笑いながら布団に寝かせた。
「蛍雪、今朝はよく眠っていないだろ。もうお休み」
「でももう夜だよ。それに眠くない」
「興奮しているからだよ。けれどお前はまだ小さいから、しっかりと眠らなければいけない。ほら、目を閉じて」
蛍雪は渋々目を閉じたけれど、直ぐに深い眠りに就いた。六花は蛍雪の頬を撫でながら、小さく息を吐いた。

