あやかし神社へようお参りです。②


 ふたりは小さな家を借りた。何もない質素な家だったが、雪童子にとっては何もかもが新鮮だった。ひとつだけの布団も朽ちた畳も、気にならなかった。六花と過ごす時間がそれほど楽しかったのだ。


 「人里で暮らすとなると、お前にも名前がいるね」


 文机に向かっていた六花がふとそう呟いた。皿を片していた雪童子が瞳を輝かせて振り返る。


 「名前? 兄やみたいな!?」

 「ああ、そうだよ」


 微笑む六花に駆け寄って、その膝の上に座る。雪童子を抱きかかえるように腕を回して筆をとると、新しい半紙を用意した。


 「お前はどんな名前がよいかな」

 「兄やと同じ名前がいい!」

 「私と同じ名前は駄目だよ。人から“六花”と呼ばれた時に、お前も私も振り返ってしまうじゃないか」


 六花は頬を緩めながら雪童子の頭を撫でる。


 「そうだね。私と同じがいいならば、雪に関わる名にしようか。六花は雪の別称なんだよ」


 六花は半紙の上に文字を並べた。

 深雪、斑、銀雪、三白、不香、六出────六花が声に出しながら書いていくのを、雪童子はじっと見つめた。