「そう言えば、体育祭の種目どうする?」


 思い出したようにそう言った詩子。最近のクラス内でよく耳にする話題だった。


 「私は走るの苦手だから、大縄跳びにしようかな。詩子は?」

 「私は思いっきり走ってスカッとしたいから、リレーにするよ」


 ぐっと拳を作って見せた詩子に、彼女らしいなと頬が緩む。


 「雪ちゃんはどうする?」

 「……私は、お休み。ずっと外だから」

 「ああー、そっか。体育館の競技ってないもんね」


 あまり聞かない紫外線のアレルギーを持つ雪ちゃんは、その体質のせいで外に長居することができないらしい。体育の授業中は教室で自習しているのが多かった。


 「まあ雪子が参加したら、試合にならないでしょ」

 「え、どういうこと?」

 「男どもが気を取られてよそ見するから」


 しれっとそう言った詩子に思わず吹き出す。


 「そうだ、応援は来てね。そしたら男子たちいいとこ見せようと張り切ってくれると思うし、私たちのクラスが優勝できるかも!」

 「……うん、応援いくよ。太鼓の練習しなきゃ」


 にこにこ笑ってそう言った雪ちゃんに、「なんで!?」と声を揃えて突っ込んだ。


 「応援イコール応援団、応援団イコール太鼓ってことだろ?」


 そんな声と共に、雪ちゃんの背後から男の子がひょこっと現れた。